臨床研究部

臨床研究部

臨床研究部のご案内

臨床研究部長 岡村 菊夫

東名古屋病院臨床研究部です。
当院の臨床研究部は平成15年10月1日に開設されましたが耐震工事などにより、正式な研究部室が設置されたのは平成18年7月になりました。長い間待ったかいがあり、現在は改装してきれいになった「診断・治療研究室」、「微生物・免疫研究室」、「治験管理室」、「病態生理研究室」、「疫学・医療情報研究室」の5室とCRC室、会議室の7部屋で運用しております。
当院の臨床研究部が目指すものは、国立病院機構のスローガンである「臨床研究を通じた情報発信などわが国医療の向上への貢献」を根底に据え、内容の如何に関わらず、誰もが理解し易く、患者様や臨床の現場に確実にフィードバックさせることが出来る研究を行なうことです。ともすれば医師主導の研究に傾きがちですが、医師とは違った視点に立つコメディカル主導の臨床研究、特に患者様と最も接触する機会の多い看護研究をとても大切にしています。
現在、様々な研究が並行して行なわれていますが、いくつかの研究をご紹介いたします。

疫学・医療情報室の取り組み

これからの医療は、地域医療連携が大切です。東名古屋病院は、急性期病院と診療所、施設、在宅とを結ぶハブの役割を目指しています。地域医療連携を効率的に行うために、IT技術を有効に用いる方法が考えられます。当研究室では、IT技術を用いて、連携医療機関と医療情報を共有する体制作りをしています。
当院は、2012年9月に電子カルテが導入されました。当院で診療を受けられた患者様のオーダー、検査結果、画像、レポート、サマリーなどの医療情報は当院の電子カルテに保存されています。この、電子カルテに保存されている医療情報を、連携医療機関に対して、IT技術を用いて提供し、相互に共有することが出来れば、医療資源の最適化を図るとともに、地域における質の高い一貫した医療体制を確立できます。もちろん、個人情報が外部に漏出することはあってはならないことですので、施設間の通信には「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠したセキュリティ対策をしています。
また、東海地方は大震災の可能性が指摘されている地域です。震災時に病院内のシステムが壊滅し、全ての診療データが喪失してしまうリスクがあります。そのリスクを回避し、かつ、震災時に、他の医療機関や避難所から、当院へ通院されている患者様の診療データを参照し、診療が継続できるような仕組みを整備しています。
また、患者様自身が当院に保存されている医療情報を、スマートフォンなどを用いて参照できるシステムの開発を目指しています。

病態生理研究室の取り組み -転倒予防の研究-

今まで神経難病患者さんに対する転倒予防研究を行ってきましたが、現在は入院患者さん全体また在宅患者さん全体に対象を広げ、転倒の実態調査と予防介入研究を行っています。
H21年度国立病院機構EBM推進のための大規模臨床研究「医療・介護を要する在宅患者の転倒に関する多施設共同研究(J-FALLS)」は、介護保険を利用されている患者さんの転倒と転倒による重篤なケガの実態調査です(図1)。饗場が研究責任者をさせていただき、H23年9月1日から登録を開始し、全国44施設1400例以上の方が参加してくださいました。今後解析を進めていく予定です。
またさまざまな転倒予防の取り組みを行っています。私たち医療者だけでなく、患者さんやご家族にも積極的に、かつ楽しんで転倒予防に関わっていただくことをモットーにしています。最近の取り組みとして転倒予防川柳を患者さん・ご家族・医療スタッフから募集し掲示したところ、病棟での転倒が減少しましました。この研究は転倒予防医学研究会にて転倒予防大賞2011 実践部門の大賞を受賞しました(図2)。また2012年には川柳の日めくりカレンダーを作成し、ご家庭でも転倒予防に役立てていただいています。
今まで通り「転ばない生活講座」の開催や、転倒予防DVDの販売(税込み3000円、ホームページから申し込み可能)も行っておりますので、ぜひご利用ください。
図1.医療・介護を要する在宅患者の転倒に関する多施設共同研究(J-FALLS)
図2.転倒予防大賞2011

微生物・免疫研究室の取り組み -非結核性抗酸菌症に関する研究-

非結核性抗酸菌症は近年中高年女性を中心に急増している難治性の感染症です。中でもMAC菌を原因とする肺MAC症が非結核性抗酸菌症の80%を占めています。本疾患はいまだ治療の決め手がなく、進行すれば呼吸不全で死亡するケースも少なからずあり、新しい治療法の開発が待ち望まれています。今までに宿主要因などの検討はされて来ましたが決め手となる知見は得られておりません。そこで菌側因子を研究しなければ解決しないと考え、Variable Numbers of Tandem Repeats(VNTR)という短期間で大量に遺伝子タイピングできる方法(図3)を導入し感染菌の特徴を見出す研究や遺伝子解析を通じ特定の遺伝子を持つ菌が高い毒性を持つ可能性を発表してきました。これら臨床研究部として行なった医師、薬剤師、検査技師共同の抗酸菌遺伝子解析の論文や発表が専門学会で評価され、数多くの学会賞を受賞しております。研究部員一同喜びをかみしめさらなる発展を目指し頑張ろうと誓い合っております。
図3.抗酸菌遺伝子解析システム
結核菌や非結核性抗酸菌(M.avium)の RFLP分析やVNTR分析を行なっています。

臨床研究部の業績(学会賞他)

学会賞

  1. 平成17年度 国立医療学会総会 塩田賞
    村井敦子:「進行性核上麻痺における転倒・転落防止の為の介護のポイント」
  2. 平成18年度 日本結核病学会研究奨励賞
    森山 誠:「臨床由来Mycobacterium avium におけるVariable Numbers of Tandem Repeats 型別解析法の有用性の検討」
  3. 平成19年度 日本結核病学会研究奨励賞
    滝 久司:「肺Mycobacterium avium complex 症の治療に用いるrifanpicinとclarithromycinが示す薬物相互作用の検討」
  4. 平成21年日本細菌学会総会優秀ポスター賞
    市川和哉:「Mycobacterium intracellulare におけるMulti Locus VNTR Analysisの開発とその有用性の検討について」
  5. 平成21年日本医真菌学会優秀論文賞
    Kenji Ogawa:「Biological properties of elastase inhibitor, AFLEI from Aspergillus flavus」
  6. 平成21年度 日本結核病学会 今村賞
    小川賢二 :「MACの遺伝子研究」
  7. 平成22年度 日本結核病学会研究奨励賞
    稲垣孝行:「Line Probe Assay によるRifampicin耐性遺伝子検査の有用性-患者喀痰を供試しての検討-」
  8. 平成23年度 日本結核病学会研究奨励賞
    山本吉章:「抗結核薬の副作用発生と危険因子に関する後ろ向きコホート研究」
  9. 平成24年度 日本結核病学会研究奨励賞
    黒河和宏:「Mycobacterium avium の新規Variable Number Tandem Repeat領域の有用性の検討」

創薬研究

糸状真菌アスペルギルス属から分離同定したエラスターゼ阻害物質が、アスペルギルス感染症治療のみならず、死亡率50%以上の急性肺障害(ARDS、急性間質性肺炎、慢性間質性肺炎急性増悪)に対し有効であることを見出した。現在当院臨床研究部を中心に、名古屋大学・名古屋市立大学・名城大学と共同で臨床使用薬剤としての開発を進めている。

小川賢二:「肺アスペルギルス症克服への新しい試み」
医療 63(11) 695-701 2009

EBM研究

2009年度の国立病院機構本部主導EBM研究のプロトコールが本採用された。
医療・介護を要する在宅患者の転倒に関する多施設共同前向き研究(J-FALLS)

主任研究者 饗場郁子

これからも患者さまのお役に立てる研究を目指し頑張ってゆく所存ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 
このページの先頭へ